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日経平均6万円突破はなぜ起きたか 戦争下の史上最高値を読み解く【2026年4月】

2026年4月23日朝、東京株式市場で日経平均株価が取引時間中として史上初めて6万円の大台を突破しました。中東ではイランをめぐる軍事衝突がなお続き、原油高や供給不安への懸念がくすぶるなかでの、歴史的な高値更新です。「戦争の不安があるのに、なぜ株はここまで上がるのか?

」——多くの方が抱くこの疑問に、本記事は正面から答えます。

筆者は、かつて商品先物取引の外務員として5年間、原油をはじめとする商品市場の最前線で、相場とリスク管理を見てきました。地政学リスクと原油、そして株価の関係を現場の目線で読み解きながら、なぜ中東危機のさなかに日本株が最高値を駆け上がるのか、そして4月23日時点で今後をどう見るべきかを解説します。

① 速報:日経平均、ついに6万円台へ

スライド①:歴史的な大台突破の速報 ― 5万円(2025年10月)から6万円(2026年4月23日)まで半年で達成
スライド①:歴史的な大台突破の速報 ― 5万円(2025年10月)から6万円(2026年4月23日)まで半年で達成

ニッケイちゃんの解説:「ついに大台突破だよ!4月23日の朝、日経平均が取引時間中に初めて6万円を超えたんだ。歴史的な瞬間だね。

まず、4月23日時点の事実を整理します。日経平均株価は4月16日に終値で5万9518円と史上最高値を更新し、22日の終値も5万9585円86銭と高値を切り上げてきました。そして23日、取引開始直後に一時6万円を超え、取引時間中の史上最高値を更新したのです。

なお、先物市場では一足早く、4月17日の夜間取引ですでに6万円台をつけていました。先物が現物に先行して大台に届く、という展開でした。

注目すべきは、そのスピードです。日経平均は2025年10月に5万円に到達したばかりで、わずか半年での1万円上げという、史上最速級の大台替わりとなりました。中東情勢の不透明感がくすぶるなかで、これだけのスピードで上昇していること自体が、今回の相場の異例さを物語っています。

② 中東は緊迫しているのに、なぜ上がるのか

スライド②:最大の謎 ― 「地政学プレミアム(不安の上乗せ)」が停戦期待で剥落しリスクオンへ
スライド②:最大の謎 ― 「地政学プレミアム(不安の上乗せ)」が停戦期待で剥落しリスクオンへ

ニッケイちゃんの解説:「ここが今日いちばんの謎!戦争の不安があるのに、なんで株が上がるの?実はこれ、商品市場の現場を知っていると、そんなに不思議じゃないんだ。

これが本記事の核心です。商品市場を見てきた立場から言うと、「中東危機のさなかに株が上がる」のは、実はそれほど不思議な現象ではありません。カギは「地政学プレミアム」という考え方にあります。

戦争や封鎖の不安が高まると、原油などの価格には「供給が止まるかもしれない」という不安に対する上乗せ価格——地政学プレミアム——が乗ります。ところが、このプレミアムは、停戦や和平の期待が出た瞬間に、驚くほど素早く剥がれ落ちます。3月に急騰した原油が、4月の停戦合意報道で一気に下落したのが、その典型でした。

相場が動かしているのは「いま起きている事実」そのものよりも、「これからどうなるか」という将来の確率なのです。

4月の局面は、まさにこの「悪材料の織り込みが一巡し、緊張緩和へ向かう」段階でした。3月に最悪のシナリオを相当織り込んだ相場が、停戦への期待が出たことで、地政学プレミアムを剥がしながらリスクオン(強気)へと振れた——これが、危機のさなかでも株が上がった最大のからくりです。現場の感覚で言えば、市場は「最悪期は過ぎた」と先回りして動き始めていたのです。

③ 上昇の主役はAI・半導体 — 日経平均という指数の特性

スライド③:日経平均(株価平均型)の特性と、東エレク・アドバンテストなど「値がさ株」のパワー
スライド③:日経平均(株価平均型)の特性と、東エレク・アドバンテストなど「値がさ株」のパワー

ニッケイちゃんの解説:「もう一つの主役がAI・半導体なんだ。日経平均は、一部の『値がさ株』の影響をすごく受ける指数だから、その上昇が指数を強く押し上げたんだよ。」

地政学プレミアムの剥落と並んで、上昇を強力にけん引したのがAI・半導体関連株です。世界の主要半導体株で構成されるフィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)は、3月末を底に4月17日まで13営業日続伸し、上昇率は26%に達しました。米国のAIブームを背景に、世界の半導体株が一斉に買われたのです。

ここで重要なのが、日経平均という指数の特性です。日経平均は「株価平均型」の指数で、株価の高い値がさ株——東京エレクトロンやアドバンテストといった半導体製造装置株——の影響を強く受けます。そのため、世界的なAI相場の恩恵を、指数が人一倍強く受け取る構造になっているのです。

実際、メモリー大手のキオクシアは4月14日に売買代金1兆6447億円と、単一銘柄として過去最高を記録するなど、半導体への資金集中が際立ちました。日経6万円は、AI・半導体相場が指数という形に凝縮された結果でもあるのです。

④ 海外マネーと先物の買い戻し — 上げを増幅する需給

スライド④:上げを増幅する2つの「需給」 ― 海外投資家の買い越し(約3兆円)と先物のショートカバー
スライド④:上げを増幅する2つの「需給」 ― 海外投資家の買い越し(約3兆円)と先物のショートカバー

ニッケイちゃんの解説:「上げをさらに加速させたのが、海外マネーと『先物の買い戻し』なんだ。ここは需給の話だよ。」

相場の勢いを増幅したのが、需給の要因です。第一に、海外投資家の資金流入です。東京市場の売買代金のおよそ7割(2023年度のグロス取引高ベースで66.7%)を海外勢が占めており、彼らが日本株を買い越す局面では、流動性の高い日経平均や大型株に資金が集中します。

停戦期待が出た4月上旬には、海外投資家がわずか1週間で約3兆円もの買い越しをしたと報じられました。

第二に、先物の買い戻しです。商品先物の現場にいた者として実感を込めて言えば、相場の急変時にもっとも激しく動くのが、この「ポジションの巻き戻し」です。CTA(商品投資顧問)やマクロファンドといった投資家は、3月末以降の反発に十分備えておらず、売り持ち(ショート)に傾いていました。

そこへ上昇が始まると、損失を抑えるための買い戻しを迫られ、その買いがさらに上昇を呼ぶ——という連鎖が起きます。これが、指数を必要以上に押し上げた一因と見られています。需給の偏りが、上げの勢いを増幅したのです。

⑤ 円安・企業改革・政策 — 構造的な追い風

スライド⑤:中長期の相場を支える構造的な追い風 ― 円安・東証企業改革・21兆円積極財政
スライド⑤:中長期の相場を支える構造的な追い風 ― 円安・東証企業改革・21兆円積極財政

ニッケイちゃんの解説:「その場の勢いだけじゃないよ。日本株には、もっと長い目で見た『構造的な追い風』も吹いているんだ。」

今回の上昇は、短期の需給だけでは説明できません。背景には、いくつかの構造的な追い風があります。まず、円安です。

輸出企業の採算改善を通じて、業績期待を押し上げています。次に、企業改革です。東京証券取引所が2023年以降、上場企業に「資本コストや株価を意識した経営」を求め続けてきたことで、自社株買いや増配といった株主還元、資本効率の改善が進んできました。

さらに、政策の後押しもあります。2025年11月に打ち出された21兆円規模の経済対策では、半導体や防衛、先端技術などを軸とした成長戦略が示され、市場の期待を集めています。デフレからの脱却、企業の「稼ぐ力」の向上、海外投資家による日本株の再評価——こうした中長期の変化が、相場の土台を支えているのです。

地政学の嵐の下でも相場が崩れにくいのは、この土台があるからだと言えます。

⑥ 商品市場の現場から:原油高=株安は、単純には当てはまらない

スライド⑥:現場の真実 ― WTI原油と日経平均の長期相関はわずか0.15、「原油高=株安」は当てはまらない
スライド⑥:現場の真実 ― WTI原油と日経平均の長期相関はわずか0.15、「原油高=株安」は当てはまらない

ニッケイちゃんの解説:「ここ、プロ目線の大事なポイント!『原油が上がると株が下がる』って思いがちだけど、長い目で見ると、そんなに単純じゃないんだ。」

商品市場を見てきた立場から、どうしてもお伝えしたい点があります。それは「原油高=株安」という思い込みは、必ずしも当てはまらない、ということです。

たしかに、原油高はコスト増や物価高、リスクオフを通じて株価の重しになり得ます。けれども、長期のデータで検証すると、原油価格と日経平均の相関は実はとても低いのです。ある分析では、WTI原油と日経平均の長期的な相関はわずか0.15程度にとどまるとされています。

つまり、日本株を最終的に動かしているのは、原油そのものよりも、企業の業績や世界の景気、そしてAI・半導体のようなテーマなのです。

現場の感覚で付け加えると、商品市場では「目先のニュースの見出し」より、「期先(きさき=何か月も先の限月)の価格カーブ」を重視します。今回の原油も、すぐ受け渡す期近が急騰する一方で、期先の上昇は比較的抑えられていました。これは、市場が「混乱は一時的」と冷静に読んでいたことを意味します。

地政学の見出しに振り回されず、需給の実態とカーブの形を読む——この習慣を持っていれば、「中東危機のなかの株高」も、過度に矛盾とは感じないはずです。

⑦ 過熱感と一部銘柄集中のリスク — 浮かれすぎない視点

スライド⑦:浮かれすぎない視点 ― PER 20.6倍の過熱感と、TOPIX/中小型の出遅れという銘柄集中リスク
スライド⑦:浮かれすぎない視点 ― PER 20.6倍の過熱感と、TOPIX/中小型の出遅れという銘柄集中リスク

ニッケイちゃんの解説:「いいことばかりじゃないよ。浮かれすぎは禁物。上げの中身には、ちょっと気をつけたいポイントもあるんだ。

強気の材料が多い一方で、冷静に見ておくべき点もあります。第一に、過熱感です。4月22日時点の日経平均のPER(株価収益率)は20.6倍と、長く続いた17倍台を明確に上回ってきました。

もっとも、バブル期のPER61倍・PBR5.6倍と比べれば、PBR1.8倍の現状はバブルとは言えず、企業の利益成長に裏打ちされた面が大きいことも事実です。

第二に、上昇が一部の銘柄に偏っている点です。日経平均が6万円に乗る一方で、東証株価指数(TOPIX)や中小型株は出遅れており、相場全体が一様に上がっているわけではありません。少数の値がさ半導体株が指数を押し上げる構図は、その銘柄が崩れたときには逆に指数を大きく下げる、もろさも併せ持ちます。

第三に、ここまで見た先物の買い戻し主導の上昇は、いったん勢いが止まれば、反動の売りも出やすいということです。上げの勢いに浮かれず、その中身を冷静に見ておくことが大切です。

⑧ 4月23日時点の、今後の見立て

スライド⑧:今後を見極める3つの関門 ― 中東情勢・企業決算・金融政策
スライド⑧:今後を見極める3つの関門 ― 中東情勢・企業決算・金融政策

ニッケイちゃんの解説:「最後に、これからどう動きそうか。4月23日の時点で見ておきたい3つの焦点を挙げるよ!」

4月23日時点で、今後を左右する焦点は3つあります。

第一に、中東情勢です。これが最大の不確実性です。停戦交渉が前進してホルムズ海峡の正常化が見えてくれば、地政学プレミアムのさらなる剥落とリスクオンで、上値を試す展開が期待できます。

逆に、交渉が決裂して封鎖が長期化すれば、原油高・リスクオフで反落するリスクがあります。商品市場の目線では、原油の期先カーブが上昇に転じるかどうかが、長期化を見極める一つのサインになります。

第二に、決算シーズンです。4月下旬から3月決算企業の本決算発表が本格化します。日経平均の予想EPS(1株当たり利益)はすでに過去最高水準にあり、株価の上昇に業績の裏付けが伴うかが試されます。

中東情勢を受けて企業の業績見通しが慎重になる可能性も、注意点です。第三に、各国の中央銀行の金融政策です。FOMCをはじめとする会合を控え、金利の見通し次第では、いったん様子見ムードが強まる場面も想定されます。

総じて、6万円は「通過点」となる可能性を秘めつつも、中東・決算・金利という3つの関門を、一つずつ確認していく相場になりそうです。

まとめ

まとめ:矛盾ではなく必然の6万円突破 ― 地政学プレミアム剥落 × AI/半導体 × 需給ブースト × 構造的追い風
まとめ:矛盾ではなく必然の6万円突破 ― 地政学プレミアム剥落 × AI/半導体 × 需給ブースト × 構造的追い風

2026年4月23日、日経平均は中東危機のさなかに史上初めて6万円台を突破しました。一見矛盾に見えるこの株高は、商品市場の目線で読み解くと筋が通ります。3月に最悪のシナリオを織り込んだ相場が、停戦期待で地政学プレミアムを剥がしながらリスクオンへ転じ、そこへAI・半導体相場、海外マネーの流入、先物の買い戻し、そして円安・企業改革・政策という構造的追い風が重なったのです。

原油と日経の長期相関は0.15と低く、「原油高=株安」は単純には当てはまりません。ただし、過熱感と一部銘柄集中のもろさには注意が必要です。今後は、中東交渉・決算・中銀という3つの焦点を冷静に見極めることが、この歴史的な高値圏と付き合う鍵になります。

よくある質問

Q. 中東情勢が緊迫しているのに、なぜ日本株は上がったのですか?

A. 相場は「いま起きている事実」より「これからどうなるか」を先取りして動くためです。3月に最悪シナリオを相当織り込んだ後、4月は停戦への期待が出て、原油などに乗っていた「地政学プレミアム」が剥がれ、リスクオン(強気)に転じました。そこへAI・半導体相場や海外マネーが重なり、6万円突破につながりました。

Q. 上昇の主役は何ですか?

A. AI・半導体関連株です。日経平均は株価の高い値がさ株(半導体製造装置株など)の影響を強く受ける指数のため、世界的なAIブームの恩恵を指数が強く受けました。加えて、海外投資家の買い越しと、売り持ちだった先物の買い戻しが上げを増幅しました。

Q. 原油が上がると株は下がるのではないですか?

A. 短期的には重しになり得ますが、長期で見るとWTI原油と日経平均の相関は0.15程度と低く、「原油高=株安」は単純には当てはまりません。株価を最終的に決めるのは、原油よりも企業の業績や世界の景気、AI・半導体などのテーマです。

Q. これから日本株はどうなりますか?(4月23日時点)

A. 中東情勢の停戦交渉、3月決算企業の本決算、各国中銀の金融政策という3つが焦点です。交渉が前進すれば上値追い、決裂すれば反落、というように、これらの確認を一つずつ進める展開が想定されます。なお、見通しは一つの見方であり、将来を保証するものではありません。

※本記事は2026年4月23日時点の情報に基づくものであり、その後の情勢により状況は変化します。情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄や投資手法を推奨するもの、または投資助言を目的としたものではありません。投資に関する最終的な判断は、ご自身の責任において行ってください。

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