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米イラン戦争で株価・為替はどう動いたか 原油との「連動」を読み解く【2026年5月】

2026年2月末に始まった米国・イスラエルとイランの軍事衝突は、5月に入っても出口が見えないまま、相場を揺らし続けています。ホルムズ海峡の封鎖、原油価格の乱高下、そしてそれに連動して上下する株価と為替——。この記事では、5月11日時点での中東情勢の現状を整理したうえで、なぜ株価と為替が原油価格にこれほど振り回されるのか、その「連動の仕組み」をやさしく解説します。

なお、ホルムズ海峡の封鎖がなぜ米国産のWTI原油まで押し上げるのか、というより踏み込んだ価格の話は、関連記事「中東の封鎖が、なぜアメリカ産WTI原油まで押し上げるのか」で詳しく扱います。あわせてお読みください。

① いま中東で何が起きているか(5月11日時点)

スライド①:2026年2月末の開戦から5月11日までの主な出来事(時系列)
スライド①:2026年2月末の開戦から5月11日までの主な出来事(時系列)

ニッケイちゃんの解説:「まずは今の状況を整理するよ。2月末に始まった戦いが、5月になっても続いていて、出口が見えないんだ。」

事の発端は、2026年2月28日に米国とイスラエルがイランへの攻撃に踏み切ったことでした。これを受けてイランは、ペルシャ湾の出口にあたるホルムズ海峡を事実上封鎖し、世界のエネルギー供給に直結する事態となりました。その後、4月7日にいったん2週間の停戦が合意されたものの、和平交渉は難航。

4月13日には米国が逆に「イランの港湾を封鎖する(逆封鎖)」措置に踏み切り、米軍とイラン側が同じ海域で封鎖と阻止を競い合う、複雑な構図になりました。

5月に入っても、状況は膠着したままです。5月11日には、イランが示した和平提案について、トランプ大統領が受け入れられないと表明しました。終戦の道筋は依然として見えておらず、ホルムズ海峡の供給制約が解消する兆しは立っていない、というのが5月11日時点の現状です。

ここで押さえておきたいのが、「封鎖」の実態です。イランが海峡を物理的にふさいだというより、攻撃を受けて大手の海上保険会社が「戦争リスク保険」の引き受けを停止し、保険なしでは航行できない大手海運会社が相次いで通過を止めた、というのが実情です。封鎖前は1日およそ24隻が通っていた原油タンカーは、3隻前後、そしてほぼゼロにまで落ち込みました。

世界の海上原油輸送の約2割が通るこの一点が止まったことが、原油価格を急騰させたのです。

② 原油価格はどう動いたか — 乱高下の3か月

スライド②:WTI原油価格の推移(60ドル→119.48ドル→停戦合意で急落→再上昇)
スライド②:WTI原油価格の推移(60ドル→119.48ドル→停戦合意で急落→再上昇)

ニッケイちゃんの解説:「この間、原油価格はジェットコースターみたいに乱高下したんだ。ニュース1つで何ドルも動いたんだよ。」

この3か月間、原油価格は歴史的な乱高下を演じました。攻撃前は1バレル=60ドル近辺で推移していたWTI原油価格は、ホルムズ海峡の封鎖が報じられると急騰し、3月には一時120ドル弱(最高値は3月9日の119.48ドル)まで跳ね上がりました。

その後も、停戦への期待が出れば急落し、交渉が難航すれば再び上昇する、という展開が続きます。4月7日には終値112.95ドルの高値をつけたあと、翌8日の停戦合意で1バレル=117ドル台から91ドル台へ急落。4月17日にはイランが封鎖解除を表明して83.85ドルまで下げました。

しかし交渉が膠着すると再び上昇し、4月29日には106.88ドル、5月7日には和平接近報道で94.81ドルへ下げる、というように、報道のたびに激しく振れています。一つのニュースで価格が大きく動く——これが、地政学リスクに揺れる相場の特徴です。

もっとも、原油先物を細かく見ると、市場の冷静な読みも透けて見えます。すぐ受け渡す「期近(きぢか)」の価格が急騰する一方で、何か月も先の「期先(きさき)」の価格上昇は比較的抑えられていました。これは、市場が「混乱は深刻だが、永久には続かない」と見ていたことを意味します。

なお、その後も交渉の不透明感から、4月30日にはWTIの期近物が一時110ドルを突破するなど、上下動は続いています。

③ なぜ株価は原油に連動するのか

スライド③:原油高 → コスト増・物価高・リスクオフ → 株安、という連動経路
スライド③:原油高 → コスト増・物価高・リスクオフ → 株安、という連動経路

ニッケイちゃんの解説:「じゃあ、なんで原油が動くと株まで動くの? 直接じゃなくて、コストや物価、それに投資家の気持ちを通じてつながっているんだ。」

原油価格が株価に効くのは、いくつかの経路を通じてです。第一に、企業のコストです。原油やナフサ(石油化学の原料)の高騰は、製造業・運輸・化学・電力などのコストを押し上げ、採算を悪化させます。

第二に、物価です。エネルギー高は消費者物価を押し上げ、家計の負担を重くします。第三に、投資家心理です。

先の読めない中東情勢は「リスクオフ(リスク回避)」を呼び、株が売られやすくなります。

つまり、原油高は「コスト・物価・心理」という3つの経路で、じわじわと、あるいは一気に株価の重しになります。逆に、停戦などで原油が下がれば、これらの懸念が和らいで「リスクオン」となり、株が買われやすくなります。原油と株は、こうしてシーソーのように連動するのです。

とくに日本は、この影響を受けやすい立場にあります。原油輸入の9割超を中東に依存し、石油化学の原料となるナフサも中東からの調達が大きな割合を占めるためです。今回の局面でも、化学メーカーが減産に追い込まれたり、関連製品が値上げされたりする動きが出ました。

国として約8か月分の石油備蓄を持つとはいえ、石化原料として使えるナフサの在庫は限られており、供給制約の影響は決して小さくありません。

④ 4月8日の実例 — 停戦が生んだ「リスクオンの株高」

スライド④:4月8日の停戦報道 → 原油急落 → 日経5万6000円台への急騰
スライド④:4月8日の停戦報道 → 原油急落 → 日経5万6000円台への急騰

ニッケイちゃんの解説:「実際の例を見てみよう。4月8日、停戦のニュースで原油が急落したら、日経平均が一気に上がったんだ!」

この連動が、はっきり表れたのが4月8日でした。トランプ大統領が「ホルムズ海峡の安全航行を条件にイランと2週間停戦する」と表明したことで、市場では一気にリスクオン・ムードが広がりました。原油先物が急落する一方、日経平均株価は午前中に5万6000円台まで急騰しています。

興味深いのは、その中身です。この日は、日経平均先物と連動しやすい値がさの半導体関連株が大きく上昇した一方で、石油株や海運株はむしろ売られました。原油安は石油関連企業の収益にはマイナスでも、市場全体のリスクオンという大きな流れが、指数を押し上げたのです。

「原油安・株高」という連動が、典型的な形で表れた一日でした。

逆に言えば、交渉が決裂して原油が急騰する局面では、この日と反対のことが起こります。リスクオフが強まって株全体が売られ、円が買われて円高に振れる、という展開です。同じ「連動」でも、原油が上がるか下がるかで、相場の姿はまるで反転するのです。

⑤ 為替も連動する — 円高・円安の綱引き

スライド⑤:リスクオフの円高圧力と、原油高による円安圧力の綱引き(為替)
スライド⑤:リスクオフの円高圧力と、原油高による円安圧力の綱引き(為替)

ニッケイちゃんの解説:「実は為替も連動するんだ。世界が不安なときは円が買われて円高、安心したときは円安に振れやすいよ。」

株価だけでなく、為替もこの連動の中にあります。中東情勢が緊迫してリスクオフが強まると、安全資産とされる円が買われて円高に振れやすくなります。逆に、停戦などで安心感が広がってリスクオンになると、円が売られて円安に向かいやすくなります。

ただし、為替はもう少し複雑です。原油高は、エネルギーを輸入に頼る日本にとって貿易収支の悪化要因となり、これは中長期的にはむしろ円安に働く面もあります。つまり、「リスクオフの円高」と「原油高による円安圧力」が綱引きをしている状態です。

どちらが意識されるかはそのときの地合い次第で、為替の動きを読むときは、「いま市場は何を最も気にしているのか」を見極めることが大切になります。

なお、リスクオフの局面では、円とならんで金(ゴールド)も「安全資産」として買われやすくなります。中東情勢が緊迫すると、株が売られる一方で金が買われる、という動きがしばしば見られます。株・為替・金を合わせて眺めると、いま市場がリスクオンとリスクオフのどちらに傾いているかが、より立体的に見えてきます。

⑥ ただし、長期では原油と日経の相関は低い

スライド⑥:短期は連動しても、長期では原油と日経の相関係数は約0.15
スライド⑥:短期は連動しても、長期では原油と日経の相関係数は約0.15

ニッケイちゃんの解説:「ここ、すごく大事! 短期はこんなに連動するのに、長い目で見ると原油と日経ってあんまり関係ないんだよ。」

ここまで「原油と株・為替の連動」を見てきましたが、最後に冷静な視点を一つ。日経平均は、短期的にはイラン情勢の報道や原油価格に敏感に反応します。けれども、長期のデータで検証すると、原油価格と日経平均の相関は実はとても低いのです。

ある分析では、WTI原油と日経平均の長期的な相関はわずか0.15程度にとどまるとされています。

これは、地政学リスクや原油高がその日その週の値動きを大きく揺らす一方で、株価を長期的に決めるのは、あくまで企業の業績や経済全体の力だということを示しています。連日の乱高下に振り回されて慌てて売買するより、短期の嵐と長期の流れを切り分けて見ることが、この局面を落ち着いて乗り切るコツです。

相場の現場でよく見られるのは、連日のニュースに振り回されて、高いところで買い、安いところで投げ売りしてしまう失敗です。乱高下が激しい局面ほど、あらかじめ決めた方針を淡々と守る冷静さが、結果的に資産を守ります。原油という一つの材料だけでなく、企業の業績や世界経済全体という大きな絵を見失わないことが、何より大切です。

⑦ 5月11日時点のまとめと、これから見るべき点

スライド⑦:これから見るべき焦点 ― 停戦交渉・ホルムズ通航・産油国の増産
スライド⑦:これから見るべき焦点 ― 停戦交渉・ホルムズ通航・産油国の増産

ニッケイちゃんの解説:「最後に、これから何を見ておけばいいか。ポイントは『交渉』と『海峡が開くか』だよ!」

5月11日時点では、和平交渉は膠着し、ホルムズ海峡の供給制約も続いています。これから相場を見るうえで注目したいのは、第一に米国とイランの停戦交渉の行方、第二にホルムズ海峡の通航が回復するかどうか、そして第三にそれらを映す原油価格の動向です。交渉が前進してホルムズ海峡が開けば、原油安・リスクオンで株高・円安に振れやすく、逆に交渉が決裂して封鎖が長期化すれば、原油高・リスクオフで株安・円高に振れやすい、という大きな構図を押さえておきましょう。

もう一つ、増産の動きも注目点です。米国やOPECプラスの産油国による増産が進めば、たとえ中東の供給制約が続いても、世界全体の需給が緩んで原油価格の上昇が抑えられる可能性があります。供給制約と増産期待のせめぎ合いが、この先の原油、ひいては株や為替の方向を左右していきます。

まとめ

2026年5月11日時点で、米国・イランの軍事衝突は出口が見えないまま続き、ホルムズ海峡の封鎖と原油価格の乱高下が相場を揺らしています。原油は攻撃前の60ドル近辺から一時120ドル弱まで急騰し、その後も停戦報道のたびに激しく上下しました。株価は、コスト・物価・投資家心理という経路を通じて原油に連動し、原油安・リスクオンでは株高(4月8日の日経5万6000円台)、原油高・リスクオフでは株安に振れやすくなります。

為替も、リスクオフの円高と原油高による円安圧力が綱引きをしています。ただし、長期で見れば原油と日経の相関は低く、株価を最終的に決めるのは企業の実力です。短期の連動に振り回されず、交渉とホルムズ海峡の行方という大きな焦点を見据えることが大切です。

そして、ホルムズ海峡の封鎖がなぜ米国産のWTI原油の価格まで押し上げるのか——その価格の仕組みは、関連記事で詳しく解説しています。あわせて読むことで、いまの相場の全体像がより立体的に見えてくるはずです。

よくある質問

Q. なぜ中東の戦争で日本の株価が動くのですか?

A. 中東情勢の悪化はホルムズ海峡の封鎖を通じて原油価格を押し上げ、それが企業のコスト増・物価上昇・投資家心理の悪化(リスクオフ)を招くためです。これらの経路を通じて、原油高は日本株の重しになりやすくなります。

Q. 原油が下がると、なぜ株が上がるのですか?

A. 原油安はコストや物価の懸念を和らげ、市場全体が「リスクオン(強気)」に傾きやすくなるためです。実際、4月8日の停戦報道では原油が急落し、日経平均は5万6000円台まで急騰しました。ただし石油株など一部の銘柄は逆に売られました。

Q. 原油高のとき、円はどう動きますか?

A. 二つの力が働きます。世界が不安に包まれるリスクオフでは安全資産の円が買われて円高に、一方で原油高は輸入国・日本の貿易収支を悪化させ、中長期的には円安圧力にもなります。どちらが優勢かはそのときの地合いによります。

Q. 原油価格だけを見て株を判断してよいですか?

A. おすすめできません。短期的には連動しますが、長期で見るとWTI原油と日経平均の相関は0.15程度と低く、株価を最終的に決めるのは企業の業績や経済全体の力です。短期の値動きと長期の流れは分けて考えることが大切です。

連日のニュースに一喜一憂せず、複数の材料を合わせて落ち着いて判断しましょう。

※本記事は2026年5月11日時点の情報に基づくものであり、その後の情勢により状況は変化します。情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄や投資手法を推奨するもの、または投資助言を目的としたものではありません。投資に関する最終的な判断は、ご自身の責任において行ってください。

▼関連記事:「【2026年5月18日時点】中東の封鎖が、なぜアメリカ産WTI原油まで押し上げるのか」もあわせてご覧ください。

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