2026年9月、原油市場が急激に動いている。WTI原油は1バレル104.25ドル(9月10日終値、前日比+8.54%、週間+21.56%)、ブレント原油は109.44ドル(同+8.13%、週間+20.94%)まで駆け上がった。背景にあるのはホルムズ海峡の封鎖と、イランをめぐる米国との衝突激化だ。
一方、日経平均は65,142.78円(9月9日、週間-1.90%)と重い展開。ドル円は154.52円で、週間ベースでは-3.02%と円高方向に振れた。今、資源の値動きが日本株にどう効いているのかを、実測値だけで整理していく。
今、何が起きているか — ホルムズ海峡の封鎖とイラン
REWFの直近の分析を読むと、キーワードはただ一つ「ホルムズ」だ。米国とイランの衝突が激化し、原油の大動脈であるホルムズ海峡が封鎖されている状況が複数のソース(日経、時事通信、ロシア国営メディア、OilPrice等)で伝えられている。イエメンのフーシ派が紅海沿岸のモカ港を掌握し、バブ・エル・マンデブ海峡への影響を強めているとの報道もある。
ホルムズとバブ・エル・マンデブという世界の2大タンカー航路の同時不安定化——これが今回の急騰の骨格だ。
供給側でも動きがある。サウジアラビアはフーシ派の脅威を受けて今年の原油生産を最低水準に削減したとされ、ヤンブー港やフジャイラ港からの日本向け出港が滞っている状況が伝えられている。HSBCは2026年のブレント原油価格予測を80ドルから90ドルに引き上げた。
ただ、実勢はすでにその上を行っており、市場は「早期解決しない」との見方に傾いているとみられる。
価格の実際 — WTI104ドル、ブレント109ドルの意味
- WTI原油: 104.25ドル(前日比+8.20ドル、+8.54%/週間+21.56%)
- ブレント原油: 109.44ドル(前日比+8.23ドル、+8.13%/週間+20.94%)
- 日経平均: 65,142.78円(前日比-126.55円、-0.19%/週間-1.90%)
- ドル円: 154.52円(前日比+1.04円、+0.68%/週間-3.02%)
WTIが週間で+21%というのは、通常のニュース相場ではまず出ない振れ幅だ。原油と株価は逆の動きになりやすいことを踏まえると(原油価格と日経平均の逆相関)、日経が週間-1.9%にとどまっているのはむしろ「よく耐えている」部類とみられる。ただし、原油の上げが続けば時間差で企業のコストを押し上げる。
ここから先は忍耐の相場になりやすい。
なぜ日本株に効くのか — エネルギーは輸入物価の入口
日本は原油をほぼ輸入に頼っており、原油高は輸入物価を押し上げる。輸入物価が上がると、川下の企業物価・消費者物価へじわじわ波及し、家計の可処分所得を削る。これが個人消費関連や内需系の株価に効いてくる経路だ。
加えて、燃料コストが上がる運輸・素材・電力ガス関連の採算にも直接効く。地政学リスクが相場全体のリスクプレミアムを押し上げる面もある(地政学リスクとは)。
今回はドル円が週間で-3.02%と円高に振れている点が、いつもと違う。有事の円買いが一部戻ってきているのか、金融政策の思惑なのかは断定できないが、円高は輸入コストを一部相殺する。逆に、輸出企業にはやや逆風となる。
原油高と円高が同時にきているため、業種間の明暗が普段以上に分かれやすい局面といえる。
大きな方向性 — 資源価格から読む日本経済のレジーム
価格水準の歴史レンジで判断する
中東緊迫化の前、WTIはおおむね50〜70ドルのレンジで推移していた。現在の104ドルは、そのレンジを大きく上抜けている水準だ。ここで大事なのは、「ニュースの雰囲気」ではなく「価格水準そのもの」で局面を判定することだ。
仮に外交で緊張が緩んでWTIが80ドル台まで戻れば「山は越えた」と読める。逆に、90ドル台に居座り続ける、あるいはさらに上値を追うなら、これはインフレ再燃の主軸転換とみるべきだ。読者にはこの90〜100ドルという水準を、次に見るべきラインとして意識してほしい(WTI原油はなぜ中東情勢で上がるのか)。
金利はインフレの証拠、利上げは通貨防衛の後退戦
日銀がゼロ金利政策を終えて利上げを進めていること自体が、日本がインフレ気味であることの何よりの証拠だ。約30年ぶりの構造転換の入口に日本は立っており、1990年代以来の水準(1%台半ば)を目線に正常化が進みうる。この視座を土台に置きたい。
ただし、これは「勝ちに行く」利上げではなく、「通貨水準を守る」ための後退戦とみられる。判定は実質金利(政策金利−CPI)で行う。実質金利がマイナスのうちは、利上げしても円安圧力が続くのが自然で、「利上げしたのに円安」は矛盾ではなく利上げ不足の証拠だ。
防衛ラインは実質金利ゼロ近傍——現行インフレなら名目3%前後が一つの目安になる。今回のドル円154円台は、この長い後退戦の途中の一コマと見るべきだろう。
調達構造の転換 — 中東依存度は1年で97.7%→58.9%へ
今回のREWFデータで最も重要なのは、日本の原油輸入シェアの実測値だ。石油統計ベースで、中東依存度と米国シェアは以下のように動いている。
- 2025年6月: 中東97.7% / 米国0.5%(総輸入947万kL)
- 2025年7月: 中東87.6% / 米国9.4%(総輸入1001万kL)
- 2026年4月: 中東87.6% / 米国7.7%(総輸入407万kL)
- 2026年5月: 中東73.9% / 米国22.4%(総輸入729万kL)
- 2026年6月: 中東62.3% / 米国32.3%(総輸入1003万kL)
- 2026年7月: 中東58.9% / 米国37.0%(総輸入1171万kL)
わずか1年で、中東依存度は97.7%から58.9%へ約40ポイント低下し、米国シェアは0.5%から37.0%へ急拡大した。これは中東不安が続くほど、日本が調達を米国等にシフトしてきた実物の証拠だ。中東依存リスクは確かに遠のいた。
ただし、米国原油は輸送距離が長く、調達コストは中東産よりも上がる傾向がある。これは輸入物価を通じて物価上昇圧力になり、より構造的にインフレ気味の着地点を、マーケットが模索することになる。「安全は買ったが、コストは上がった」というトレードオフを、株式市場は今まさに織り込みつつあるとみられる。
名目成長レジームの循環 — 「金が回っているうちはつぶれない」
ここで押さえたいのが、名目成長のレジームだ。物価が上がる → 企業の売上や利益が名目でかさ上げされる(日経平均が65,000円台にいるのはその帰結) → 人の移動やビジネスが活発化 → 「賃金を上げないと人が集まらない」となり賃金上昇が定着 → 円安は輸出やインバウンドで実質的に受け止められる——このループが回っている間、レジームは持続する。
受益は輸出企業、インバウンド関連、価格転嫁力のある企業だ。逆に、回転が止まる兆候は、実質賃金の失速や、円安が「容認」から「防衛」に転換する水準——たとえばドル円が160円を大きく超えて日銀・財務省が本格介入に踏み切るような場面——だ。今のところ、ドル円は154円台で週間は円高に振れており、ぎりぎり容認レンジに収まっているとみられる。
現在のレジームと転換条件
以上を踏まえると、現在のレジームは一言でこう規定できる。「インフレ懸念が後退しきるまで、リスクオンで適宜調整を入れながら、日経は高値レンジを踏み上げていく」。ただし、これはWTIが80ドル台に戻ることを暗黙の前提としている。
WTIが90ドル台に定着、あるいは100ドル台の居座りを続けるなら、これはインフレ再燃で主軸転換のシグナルだ。読者が次に見るべき価格は、①WTI90ドル(踏み止まれるか)、②ドル円160円(容認から防衛へ)、③日銀の追加利上げペース——この3つに集約される。
投資家が見るべきポイント
- WTIが90ドル台に定着するか、80ドル台まで戻るか。80ドル台回帰なら「山は越えた」
- ドル円154円台の攻防。160円を超えていくと、レジーム維持シナリオに黄信号
- 日本の原油輸入における米国シェアの続伸(直近37.0%)——調達構造の転換は続くか
- ホルムズ海峡・バブ・エル・マンデブ海峡の航行再開のニュース
- 企業の価格転嫁ペースと実質賃金の動き。名目成長ループが回り続けるかの本命指標
まとめ
WTIが104ドル、ブレントが109ドルまで駆け上がった一方、日経平均は週間-1.9%にとどまり、ドル円は154円台で週間は円高に振れた。REWFが示すホルムズ海峡の封鎖とイラン情勢は本物のリスクだが、日本の原油調達は1年で中東依存97.7%→58.9%、米国シェア0.5%→37.0%と大きく構造転換している。「安全とコストのトレードオフ」を織り込みつつ、名目成長のレジームは今のところ持続——WTIが80ドル台に戻れば追い風、90ドル台に居座れば主軸転換。
ここが今の相場の分水嶺だ。
よくある質問
Q1. 原油が上がると必ず日経は下がるのですか?
いつも必ず、というわけではありません。傾向としては逆の動きになりやすいですが、今回のように円高が同時にくれば輸入コストの一部を相殺しますし、資源関連銘柄は逆に上がります。指数全体の動きと、個別業種の明暗を分けて見ることが大切です。
Q2. ホルムズ海峡が封鎖されると日本のガソリンはどうなりますか?
短期的には原油の卸価格が上がるため、ガソリン小売価格に時間差で反映されるとみられます。ただし、日本は原油調達の多角化を進めており、直近では米国からの輸入が全体の37.0%まで拡大しています。かつてほど中東一本足打法ではなくなっている点は、リスクを和らげる方向に働きます。
Q3. 日銀が利上げしているのに円安になるのはなぜですか?
実質金利(名目金利−インフレ率)がまだマイナス圏にあるためとみられます。名目で少し利上げしても、インフレを差し引いた実質でみれば依然として緩和的で、通貨を積極的に買う理由になりにくいのです。防衛ラインの目安は実質金利ゼロ近傍——現行インフレなら名目3%前後です。
Q4. 個人投資家は何を最優先で見ればいいですか?
まずはWTIの水準(80ドル台に戻れるか、90ドル台に居座るか)、そしてドル円(154円台を維持できるか、160円方向に流れるか)の2つです。この2つが実測で示すサインは、ニュースの雰囲気よりずっと正直です。
本記事はAIによる情報提供です。投資助言ではありません。