ホルムズ海峡を通る貨物船が過去10日間の平均より80%も少ない。この一文が、いま日本の株式市場を動かしている中東情勢の本質を象徴しています。トランプ大統領は国連総会でイランを「壊滅させる」と発言し、緊張は一段と高まりました。
それでも原油価格はこの1週間で大きく下げ、日経平均は史上最高値圏で推移しています。ニュースの怖さと相場の動きが食い違うとき、投資家は何を見ればよいのか。今日はREWF(資源戦争最前線)の分析と実測価格から、資源と地政学が日本株にどう効いているかをやさしく解説します。
今、中東と資源で何が起きているか
REWFの直近分析を読むと、論点は大きく3つに整理できます。ひとつはイランをめぐる米国の強硬姿勢。トランプ大統領は国連総会でイランへの軍事オプションに言及する一方、仲介者との会議は「非常に良い」とも語り、脅しと対話が同時に走っています。
イラン側もモフセン・レザイ安全保障会議秘書官が、米国が条件を満たすまでホルムズ海峡の開放や交渉再開は行わないと明言しました。
ふたつめは、そのホルムズ海峡の実際の細り。OilPriceの報じた通過貨物船80%減という数字は、封鎖に近い状態が現実に起きていることを示します。三つめが中国のレアアース輸出許可の遅延で、米中首脳会談を前に中国はイランへの影響力もカードとして見せています。
中東・エネルギー・米中の3本が同じ舞台で絡み合っている、というのが今の景色です。
価格の実際 — ニュースの熱と逆行する原油
- WTI原油: 92.68ドル(前日比 -2.02%、1週間で -8.59%)
- ブレント原油: 98.19ドル(前日比 -1.07%、1週間で -7.09%)
- 日経平均: 65,018.95円(前日比 +1.38%、1週間 -2.08%)
- ドル円: 158.31円(前日比 +0.60%、1週間 +3.09%)
見出しはホルムズ危機一色ですが、原油は週で約8〜9%も下げています。ニュースの温度が上がる中で価格が下がるのは、市場が「最悪シナリオ(全面封鎖の長期化)は織り込みすぎだった」と一段巻き戻していると読むのが自然です。原油と日経平均は逆相関になりやすい関係にあり、詳しくは原油価格と日経平均の逆相関もあわせてご確認ください。
なぜ日本株に効くのか
日本は原油をほぼすべて輸入に頼るため、原油価格は企業のコストと家計の物価を通じて相場に効きます。原油が下がれば輸入コストが軽くなり、内需系や電力・素材の利益率が回復しやすい。逆に上がれば物価高が長引き、日銀の利上げ観測が強まって円債・為替経由で株にも重石になります。
今回の週足-8.59%は日経の押し上げ材料側に効いたと考えるのが素直です。ホルムズ海峡がなぜここまで日本株を揺らすのか、その背景はWTI原油はなぜ中東情勢で上がるのかで整理しています。
大きな方向性 — 30年ぶりの構造転換を、資源という物差しで読む
ここが本記事の核です。目先のニュースではなく、日本市場の大局を4つの軸で描きます。
① 価格水準を歴史レンジで見る。中東緊迫化の前、WTIは50〜70ドルのレンジでした。今の92.68ドルはまだ高い。
ただし1週間で-8.59%と大きく水準を切り下げており、山の頂は越えつつあると読めます。90ドル台に再び乗って定着するようなら「インフレ再燃」が主軸に戻る合図です。
② 金利はインフレの証拠として読む。日銀の利上げは、日本がインフレ気味である何よりの証拠です。ゼロ金利政策の終了は約30年ぶりの構造転換の入り口で、正常化の目線は1990年代以来の1%台半ばまで伸びうる。
この「30年ぶりの大転換のただ中にいる」という視座を、方向性の土台に置きます。
③ 利上げは通貨防衛の後退戦。ドル円は158.31円、1週間で+3.09%と再び円安が進みました。判定は実質金利(政策金利−インフレ率)で行います。
実質金利がマイナスのうちは、利上げしても円安圧力は続くのが自然。「利上げしたのに円安」は矛盾ではなく利上げ不足の証拠です。防衛ラインの目線は実質金利ゼロ近傍、名目3%前後という中期の道のりになります。
④ 調達構造の転換を追う。石油統計の実測で、原油輸入の姿が急変しています。中東依存度は2025年6月の97.7%から2026年7月に58.9%まで低下し、代わって米国シェアが0.5%から37.0%へ急拡大。
ホルムズ海峡リスクが物理的に減る一方、輸送距離が伸びる分だけ調達コストは構造的に上がりやすい。中東依存の縮小は歓迎材料ですが、その代償として日本経済は今より少し高いインフレ着地点をマーケットが模索する流れに入っています。
この4つを重ねると、名目成長のレジームが見えてきます。物価上昇 → 企業業績の名目かさ上げ(日経65,018円という高値更新はその帰結) → 人手不足からの賃金上昇 → 為替は円安容認、というサイクル。金が回っているうちはレジームは持続します。
現在のレジームを一言で規定するなら、「インフレ懸念が後退するまで、リスクオンで適宜調整を入れながらレンジを踏み上げていく」局面。転換条件は、WTIが90ドル台に定着し原油発インフレが再燃する場合、あるいは円安が「容認」から「防衛」に変わる水準(実質金利ゼロを大きく割り込む状況)に達する場合です。
投資家が見るべきポイント
- WTIの節目: 90ドル定着なら注意、80ドル割れなら株の追い風
- ドル円160円: この水準を明確に超えて定着するかで、政策の姿勢が変わる可能性
- 原油輸入の国別シェア: 米国シェアが今後も4割超に伸びるかどうか
- ホルムズ通航量: 貨物船80%減の状態が緩むかどうかが短期の主戦場
- 米中首脳会談とレアアース: 供給遮断が現実化すれば製造業の一部が痛む
地政学リスクという言葉の意味自体はこちらの記事で整理していますが、投資判断で大事なのは「価格がその不安をすでにいくら織り込んだか」を実測で確認することです。
まとめ
ニュースはイラン緊張一色ですが、原油は週で大きく下げ、日経は最高値圏。日本の原油調達は中東依存97.7%から58.9%へと実測で構造変化が進んでいます。30年ぶりの金利正常化と、資源調達の作り替え、そして円安容認のレジーム——この3つが同時進行しているのが今の日本市場の姿です。
相場の一次シグナルはあくまで資源価格。WTI、ドル円、輸入シェアの3点を実数で追い続けることが、余分な物語に惑わされない一番の防具になります。
よくある質問
Q1. ホルムズ海峡が危ないのに、なぜ原油は下がっているの?
市場はすでに「全面封鎖・長期化」まで一度織り込んだためです。トランプ政権とイランの間で非公式会談も持たれており、極端シナリオの確率がわずかに下がると価格は巻き戻します。1週間で-8.59%の下落は、そのリバウンドとみられます。
Q2. 日経が最高値圏なのに、これから買っても大丈夫?
断定はできませんが、名目成長レジーム(物価上昇→業績かさ上げ→賃金→円安容認)が続く限り、指数のレンジは切り上がりやすい構造にあります。転換の合図はWTI90ドル定着や実質金利の急改善など、価格側のサインで判断するのが安全です。
Q3. 米国から原油を買うようになったのは日本にとって良いこと?
中東依存リスクを下げる意味では前向きです。ただし輸送距離が長く調達コストは上がりやすいため、輸入物価経由でインフレ気味の着地になりやすい面もあります。安全保障とコストの綱引きで見るとよいでしょう。
Q4. これからチェックすべき数字を1つだけ選ぶなら?
WTI原油価格です。90ドル定着なら再びインフレ主軸へ、80ドル割れなら株の追い風という単純な物差しとして機能します。加えて余裕があればドル円160円と米国シェアの伸びを確認してください。
本記事はAIによる情報提供です。投資助言ではありません。