中東のホルムズ海峡をめぐる緊張が、再び相場の最前線に戻ってきた。WTI原油は91.12ドル(10月8日時点、前日比+3.22%)まで水準を切り上げ、ブレント原油は103.93ドル(同+3.72%)。一方で日経平均は70,035円(10月7日、前日比-0.92%)と調整が入った。
ドル円は157.86円。「原油が上がって、日経が下がる」という典型的な資源ショックの構図が、数字の上でもきれいに出ている。
今、何が起きているか — ホルムズ海峡という一本の喉元
REWFの直近の分析を読むと、ニュースはほぼ一つのストーリーに収斂している。ホルムズ海峡の通航が細っている、という話だ。イランの最高指導者の顧問は「問題が解決されるまで閉鎖される」と発言し、米国国務長官は供給が「完全にブロックされている」と述べた。
一方で、通航量は2月の水準の80%まで戻っているとの報道もあり、現場の数字は日ごとに揺れている。
副次的な材料も厚い。ロシア外務省は航行正常化への「最大限の努力」を強調し、米ロはノルドストリームの再稼働協議に入ったと伝わる。インド・トルコ・エジプト・米国の4か国はロシア・ウクライナ停戦案を持ち寄った。
米軍はイランへの新たな作戦オプションを準備中とも報じられる。平和に向かう動きと、軍事的緊張の両方が同時に進行しているのが、今局面のややこしさだ。
タンカー船長に1航海5万ドルのボーナスが積まれているというアルジャジーラの報道は、現場のリスクプレミアムをなまなましく示している。保険料・運賃・待機時間が全部跳ね上がれば、FOBの原油価格が落ち着いても、着値はじわじわ重くなる。
価格の実際 — 水準で読む
- WTI原油: 91.12ドル(前日比+2.84ドル、+3.22% / 週間-1.6%)
- ブレント原油: 103.93ドル(前日比+3.73ドル、+3.72% / 週間-1.28%)
- 日経平均: 70,035.71円(前日比-648.27円、-0.92% / 週間+5.53%)
- ドル円: 157.86円(前日比-0.44円、-0.27% / 週間-0.6%)
重要なのは、日々の騰落ではなく「水準」だ。中東の緊張が本格化する前、WTIは概ね50〜70ドルのレンジで推移していた。今の91ドル台はそのレンジから20ドル以上上に乗った水準で、まだ「平時」には戻っていない。
ただし週間でみれば-1.6%と、山の勾配はやや緩んでいる。WTI原油はなぜ中東情勢で上がるのかという構造的な話は、この水準感と合わせて読むと腹落ちする。
なぜ日本株に効くのか
日本は原油をほぼ全量輸入している。だから原油が上がれば、電気・ガス・ガソリン・物流・プラスチック原料、ほぼすべての川下コストが上がる。企業にとっては粗利の圧迫、家計にとっては可処分所得の目減りだ。
原油と日経は逆相関になりやすいのは、この単純な理屈に根ざしている。
加えて、原油高は輸入物価経由でインフレを押し上げる。日銀の政策金利が動かざるを得ない方向に押され、金利上昇は株式の割引率を上げる。原油高が日経に効く経路は、「コスト増」と「金利経由」の二本立てだと押さえておけばいい。
大きな方向性 — 30年ぶりの転換点を、資源価格から読む
ここからが本記事の核だ。目先の騰落ではなく、相場のレジーム(大枠の環境)を資源価格から規定する。
第一に、価格水準の歴史レンジで判断する。WTIが50〜70ドルに戻れば「山は越えた」と読める。今は91ドル台。
まだ平時には戻っていないが、週間ベースでは-1.6%とピークから下げている。ホルムズの火種は残るものの、「ここからさらに大きく上に抜ける」のか「平時レンジに戻っていく」のかを、水準で見張る局面だ。
第二に、調達構造の静かな大転換が進んでいる。石油統計の実測で日本の原油調達先を追うと、はっきり分かる。2025年8月に中東依存度95.8%・米国シェア3.1%だったものが、2026年4月に87.6%/7.7%、5月に73.9%/22.4%、6月に62.3%/32.3%、7月に58.9%/37.0%、8月に60.7%/33.7%と、わずか1年で中東依存が60%前後まで下がり、米国シェアが30%台まで急拡大している。
これはホルムズ・リスクの「構造的な希釈」だ。ただし代償がある。遠距離輸送分の運賃と、WTIベースの価格水準の違いが輸入コストに乗る。
中東依存は遠のく代わりに、着値はじわじわ上がりやすい。
第三に、金利はインフレの証拠として読む。日銀がゼロ金利政策を終え、利上げに向かっているのは、日本が構造的にインフレ気味になっている何よりの証拠だ。1990年代以来、約30年ぶりの大転換の入口にいる。
ただし、利上げしてもドル円は157円台に張り付いたまま。これは「利上げしたのに円安」という矛盾ではなく、実質金利(名目金利-物価上昇率)がまだマイナス圏にあることの帰結、つまり利上げ不足の証拠と読むのが筋だ。防衛ラインは実質金利ゼロ近傍。
マーケットは「現在の円水準を守るために、どこまで名目金利を上げるべきか」を試している。
第四に、名目成長レジームの循環で読む。原油高・輸入物価上昇 → 国内物価の押し上げ → 企業業績の名目かさ上げ(日経70,000円台はその帰結) → 人の移動と賃金上昇 → 円安容認(輸出とインバウンドで着地)という回転が、今はまだ回っている。「金が回っているうちはつぶれない」。
週間+5.53%で70,000円台を踏み上げてきた日経は、この循環の帰結そのものだ。
結論として、現在のレジームはこう規定できる。「インフレ懸念が後退するまで、資源価格の変動で押し目を入れつつも、名目成長の循環でレンジを踏み上げていく局面」。地政学リスクは押し目の供給源であり、トレンドの反転要因ではまだない。
ただし転換条件は明示しておく。WTIが90ドル台で定着せずさらに切り上がり、ブレントが110ドル台に乗るような展開になれば、インフレ再燃で金利経路が主軸に戻る。そのとき相場の主役は資源株や金融株に、守りの対象は内需グロースに移る。
逆にWTIが80ドル割れ・70ドル台に戻れば、「山は越えた」のサインで、資源価格を気にせず名目成長を素直に踏み上げるフェーズに入る。
投資家が見るべきポイント
- WTIの水準: 90ドルを挟んで定着するか、80ドル割れに戻るかの一点
- ブレント-WTIの差: 現在102 – 91 = 約12ドル。中東リスクプレミアムが乗っているほどスプレッドは広がる
- 原油輸入の国別シェア: 米国シェア30%台の定着は構造変化。ホルムズ依存の希釈ペースを月次で確認
- ドル円の防衛ライン: 160円が意識されるか。利上げ織り込みと実質金利の推移を併読
- 日経の業種別: 原油高局面では海運・資源・商社が受益、電力・陸運・化学はコスト圧迫
まとめ
ホルムズ海峡を巡るニュースは尽きないが、相場で見るべきは水準だ。WTI 91ドル台は「山の中腹」。日本は原油調達の多角化を進め、米国シェアを急拡大させることでホルムズ依存を構造的に薄めつつある。
ゼロ金利の終わりは30年ぶりの転換で、日銀の利上げはインフレの証拠であり、円安は利上げ不足の証拠。この大枠の中で、名目成長の循環が回っているうちは、日経は押しをこなしてレンジを踏み上げていく、というのが現在のレジームの読み方になる。
よくある質問
Q1. ホルムズ海峡が本当に止まったら、日本株はどこまで下げますか?
断定はできない。ただし輸送の80%は維持されているとの報道もあり、現時点の原油価格はまだ「完全封鎖」を織り込んではいないとみられる。もし全量停止となれば、WTIが100ドル台中盤以上に跳ねる可能性があり、日経は業種別で明暗が強く出る展開になりやすい。
Q2. 原油の調達を米国に振り替えれば、リスクはなくなりますか?
中東依存の集中リスクは下がるが、価格リスクが消えるわけではない。輸送距離が延びる分、運賃と在庫コストが乗る。結果として、着値ベースの原油コストは中東依存時代より平均的に高めで安定する、という着地になりやすいとみられる。
Q3. 日銀が利上げしているのに、なぜ円安が止まらないのですか?
名目金利から物価上昇率を引いた「実質金利」がまだマイナスだからだ。マーケットは実質金利で動く。利上げしても物価上昇に追いついていなければ、通貨防衛としては不十分という評価になる。
「利上げしたのに円安」は矛盾ではなく、利上げがまだ足りないことのサインと読める。
Q4. 一般の投資家は、まず何を毎週チェックすればいいですか?
WTIの終値水準(80ドル台に戻るか、90ドル台で定着するか)と、ドル円(160円を試すか)の2本で十分だ。この2つが動くときに業種別の受益・被害が入れ替わる。あとは月次の原油輸入シェアで、米国からの調達が30%台を維持できているかを定点観測しておけばよい。
本記事はAIによる情報提供です。投資助言ではありません。